小規模不動産特定共同事業と運用実例
小規模不動産特定共同事業は家主や地主、不動産会社同士、金融機関が連携するための制度である。
2022年8月1日に私の経営する株式会社Brain Trust from The Sunが設立10年を迎え、節目の時期に何をすべきかを考えました。そこで、不動産証券化手法を使って持続可能な開発目標を達成する仲間を増やしていくべきだと考えるに至りました。
まず簡単に制度に触れておきます。
国土交通省の小規模不動産特定共同事業のパンフレットは
https://www.mlit.go.jp/common/001233900.pdf
「2017年 新たに、小口の投資資金を活用して、地域の不動産事業者等が古民家・空き家等の様々な不動産の利活用に取り組むことが可能となりました。」と書かれています。
パンフレットは分かりやすく書かれているのですが、実務的にはちょっとおかしいなというところがあります。
そして、制度そのものが複雑でわかりづらいところが難点です。
これは国土交通省所管のもとで学識経験者・金融機関・弁護士等、専門家と言われる人たちが仕組みを作っており、そこには我々のように普段からユーザーや不動産に接している人間がいないのが原因ではないかと考えています。
小規模不動産特定共同事業がより使い勝手の良い仕組みになるために、地域の不動産事業者の声を国と専門家に届けていくことが必要だと考えています。
制度がわかりにくいのは事実ですが、規制緩和により小規模な不動産事業者が不動産証券化の仕組みをつかえるようになった事の方が大事です。
私は仕組みを学んで小規模不動産特定共同事業1号2号の登録を行い、3つの特定目的会社を設立して、4つの物件を運用しています。また、神奈川県鎌倉市の古民家再生宿 琥珀「-AMBER-」の改修費用として700万円を個人投資家から集めました。また、電子取扱い業務も開始しました。
私が小規模不動産特定共同事業を利用することで受けた一番大きなベネフィットを紹介したいと思います。それは、小規模不動産特定共同事業者である当社とは別の特別目的会社を作って、倒産隔離の考え方により別与信で物件を取得することができるようになったことです。
私の会社のように創業者が100%株式を持っていて他者から出資を受けていない、資本増強も上場もしていない会社が投資家から出資を募って不動産を運用してその利益を配当するというのが小規模不動産特定共同事業の最大の魅力です。
私がSPCを利用した倒産隔離型のスキームを使うのに一番苦労したのは、物件を取得するときのノンリコースローンを出してくれる金融機関がいない事でした。幸い良い金融機関と縁を持つことができ、公益財団法人不動流通推進センターの債務保証制度を利用して、ノンリコースローンを利用することができましたが、金融機関に協力してもらわないとこの市場は大きくなっていきません。
公益財団法人 不動流通センターホームページより引用
https://www.retpc.jp/40years/division4.html
この債務保証の仕組みは不動産会社同士が協業することによって利用することができます。小規模不動産特定共同事業が不動産会社同士、金融機関が協力するとベネフィットが受けられる制度なのです。
実はこの制度は家主さん、地主さんが自らの資産の資産をオフバランスし、そのあとも投資家として関与していくというスキームに応用することができます。土地や物件は売却したいけれども、思い入れがあって完全に縁を切ってしまうのは忍びないという家主さん、地主さんにはオリジネーター(組成のために必要な物件を提供するプレーヤー)となりそのあと投資家として参加するという選択肢が提示できるのも不動産証券化手法の魅力だと思います。
私はこの手法を使って持続可能な開発目標を達成する仲間を増やしていきたいと考えています。